PS5【ウルヴァリン評価】をクリアして分かったこと【Marvel’s Wolverine】
発売当日から爪を出しっぱなしで遊んだ。結論から言うと、これは「スパイダーマンの作り手がウルヴァリンをやったらこうなる」という作品ではない。ニューヨークを縦横無尽に飛ぶゲームではなく、狭い通路と血の匂いの中で、死にかけて、治って、また前に出るゲームだ。評価が分かれる理由も、だいたいそこに集約される。
メタスコアだけ見て買うか迷っている人、スパイダーマンシリーズが好きだから当然買うと思っている人、コミックのローガン像をどれだけ再現しているか知りたい人。そのあたりを、実プレイの感触で整理する。
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まず、このゲームが何なのか
『Marvel’s Wolverine』はインソムニアック・ゲームズが手がけたPS5独占のシングルプレイヤー作品で、2026年9月15日発売。日本時間だと同日13時解禁だった。価格は通常版が税込8,980円前後、デジタルデラックス版は追加コスチューム付きで一段高い。年齢区分はいわゆる成人向けで、流血と切断はかなり本気だ。設定でゴア表現を弱めるトグルはあるが、弱めても「ヒーローゲーム」の感覚には戻らない。
ストーリーはオリジナル。ローガンは3年前にチームXを離れ、ウルヴァリンの役目は終わったつもりでいる。そこに、人間至上主義の実業家ボリバー・ debidamenteトラスカがミュータントを拉致しているという話が来る。仲間を救うために、彼はもう一度前線に戻る。舞台はカナダの雪、東京、そして無法地帯の島国マドリプール。ジーン・グレイ、ミスティーク、セイバートゥース、オメガレッド、レディ・デスストライク、ネイサン・エセックスあたりが絡む。

スパイダーマンシリーズと一番違うのは構造だ。オープンワールドではない。ミッション単位で場所が切り替わる、かなり直線的なアクションアドベンチャーである。探索はある。匂いを辿る、ウイスキー瓶を拾う、ナイトメアトライアルの扉を探す。ただ、街そのものを自分の庭にする感覚はない。移動の主役はバイクとジャンプと、敵までの距離を一気に詰める突進だ。
ボイスは日本語にも対応している。ローガンを演じるリアム・マッキンタイアの英語演技は海外レビューでもかなり評価が高い。日本語音声で遊ぶ人も多いと思うが、カットシーンの間の「間」は英語のほうが肌に合う瞬間が多かった。どちらでも物語は追える。
海外批評の平均はおおよそ77〜79点前後。スパイダーマン2の90点台と比べると明らかに落ちる。一方でPlayStationストアのユーザー評価は発売直後からかなり高い。このズレ自体が、本作の性格をよく表している。
戦闘がこの作品の本体である
最初の数時間で分かるのは、このゲームは「回避して安全に削る」ゲームではないということだ。体力が減ったら下がる、ではない。減ったら前に出ろ、である。
基本操作はシンプルだ。□が連撃、△が重い一撃と飛び込み、L1がパリィ、回避は側面へ転がる。遠距離攻撃はほぼない。弾は爪で弾くか、相手のところまで飛んで刺す。ここがスパイダーマンとの決定的な差で、空中から糸で吊るす余裕がない。常に近接だ。
核になるのがレイジゲージである。攻撃を当てる、パリィを決める、フィニッシュを入れる。それだけで怒りが貯まる。3段階ある。
- 1段階目は通常運転
- 2段階目でコンボの締めが強くなり、「ラストスタンド」が使えるようになる
- 3段階目で画面の色が落ち、弱い敵は即処刑できる領域に入る
ラストスタンドがうまい。体力が尽きても、レイジが残っていればボタン連打で起き上がる。代わりに怒りを消費する。つまり「死なないキャラ」を「怒りを稼いだ者だけが生き返るキャラ」に変換している。逃げて回復するより、切り続けたほうが生きる。設計としてウルヴァリンそのものだ。
ヒーリングファクターも常時フル回復ではない。戦っている最中の自然回復は遅い。本領は、怒りを燃料にした再起と、戦いが一段落したあとの傷口が塞がっていく演出にある。肋骨が見えるほど抉られても、数秒で肉が戻る。見た目の気持ち悪さと、キャラクター性の気持ちよさが同時に来る。
トラスカ側はアビリティ阻害装置を置いてくる。これが厄介で、設置されている間は超回復が効きにくい。装置を壊すまで「ただの刃物を持った男」として戦わされる。序盤は気にならないが、中盤以降は装置優先で動けるかどうかで楽さが変わる。
テクニックは方向キーに割り当てる特殊技で、トルネードスピンのような範囲攻撃、膝で怯ませる技、距離を詰めて串刺しにする跳躍などが段階的に解禁される。アダプテーションは耐久やレイジ容量、クールダウンといった中長期の強化だ。スキルツリーは巨大ではない。新しい玩具が次々出てくるタイプではなく、同じ刃の使い方が少しずつ凶悪になるタイプだ。
ここが評価の分かれ目になる。序盤から中盤にかけての「切り続ける快感」は本物だ。血の量が過剰で、フィニッシュのカメラが寄って、四肢が飛ぶ。笑いが出るほど汚い。ただ、敵の種類が増えても要求される行動が同じになりやすい。パリィして壁に蹴り飛ばして□連打。このループが後半に伸びると、批評側が「単調」と書く理由になる。自分も15時間を超えたあたりで、新しい部屋に入った瞬間「また同じ部屋だ」と感じた。
それでも、3段階目のレイジに入ったときの感覚は他のヒーローゲームにない。視野が狭くなり、呼吸が荒くなり、雑魚が次々と即死する。ここだけは、 quantifiable な点数より先に体が覚える。
物語とキャラクターの感触
ストーリーは「十数時間でわかるウルヴァリン」という言葉が一番近い。壮大なX-MENサーガというより、一人の男が家族と役割と暴力の間で迷う話だ。
ローガンは最初からヒーロー面をしていない。疲れていて、口が悪く、自分の衝動を信用していない。リアム・マッキンタイアの声が低くて乾いていて、怒鳴るより呟くほうが怖い。ジーン・グレイは単なる恋の相手ではなく、ローガンが「人でいられる時間」を作る存在として機能する。セイバートゥースは鏡だ。制御を失った先にある自分を、すぐ隣に置かれている感じがする。ミスティークとのやり取りは、派手な変身ショーより、過去を共有した者同士の気まずい沈黙のほうが残る。

トラスカはわかりやすい仇役だ。ミュータントを商品と脅威の両方として扱う資本家で、センティネルやリーヴァーズを使って囲い込む。オメガレッドとの衝突は見た目どおり重い。デスストライクは刃対刃の応酬になる。エセックス(トロイ・ベイカー)は声の質がよく、ただの解説役で終わらない。
弱点もある。展開の先が読める場面が少なくない。誰が待っているか、どの部屋で何が起きるか、2時間もすれば予測が立つことがある。カットシーンの演技は一流なのに、脚本が「今ここでこれを言う」と急ぐ瞬間がある。スパイダーマン2ほど街の日常に感情を溶かす余裕もなく、かといって完全に一本の映画として研ぎ澄まされているわけでもない。良いシーンの密度は高い。全体の設計は、やや素直すぎる。
日本パートは観光映像にはしていない。東京は夜の路地と施設の中が多く、マドリプールのロータウンはネオンと泥とバーの匂いが強い。カナダの雪原は「広い」というより「寒い」。オープンワールドではない代わりに、場所ごとの空気ははっきり分かれている。
プレイ時間の目安はこうだ。
- 本編だけ、寄り道少なめ:12〜15時間
- 収集とトライアルも拾う:18〜22時間
- 高難易度+プラチナ狙い:25時間前後
スパイダーマン2より短い人が多いと思う。その短さが「物足りない」にも「ちょうどいい」にもなる。
始め方。最初の2時間で決めておくこと
起動直後にやることは少ないが、あとから面倒になる設定がある。
画質は本体による。通常のPS5ならパフォーマンス優先でいい。動きが速いゲームなので、綺麗さよりフレームの安定のほうが爪の感触に直結する。PS5 Proならバランスが取りやすい。HDRは環境によるが、夜のマドリプールは乗せたほうが空気が出る。
難易度は「ストーリー」だとラストスタンドの意味が薄れる。普通か、少し上から始めたほうがレイジの設計を理解しやすい。死なないと、このシステムはただのゲージに見える。
ゴア表現は好みで切っていい。ただし切ると、この作品が一番売りにしている「気持ち悪いくらいLoganらしい暴力」が半分になる。子どもが横にいるなら切る。一人で夜にやるなら、初期設定のままでいい。
操作の癖は早めに体に入れた方がいい。
- 遠くの射手は歩いて近づかない。△の飛び込みか、弾きながら詰める
- パリィは万能ではない。赤い攻撃は回避に逃す
- 囲まれたらトルネード系を温存せず使う
- 体力が赤いときこそ攻撃を止めない。止まるほうが危ない
- 阻害装置が見えたら敵より先に壊す
ステルスは使える。強化された嗅覚で敵を追跡し、後ろから仕留める。ただ、本作のステルスは「忍びのゲーム」としては弱い。成功しても得られるものが少なく、失敗したら普通に乱戦になる。無理に隠れるより、最初の一人を確実に仕留めて乱戦に持っていったほうがテンポがいい。レビューでステルスが不評なのは、システム自体が spec 不足というより、ウルヴァリンに「隠れろ」と言っている違和感のほうが大きい。
収集品は序盤から意識した方がいい。ウイスキー瓶はアダプテーション枠に効く。匂いの軌跡は、最初はうるさいが、オフにすると見逃す箱が増える。ナイトメアトライアルは本編の合間の腕試しで、高スコアを取ると強化素材が厚い。本編を急ぐ人は後回しでいい。コンプする人は各ミッションを出る前に一周した方が、あとから戻る手間が減る。
予約特典のクラシックブラウンと反射する爪は、見た目の話だ。強さは変わらない。テクニックポイントが1つ付く程度。デラックスの追加スーツも同様で、プレイの中身よりコレクション寄りの差である。

効率よく進めるための実戦メモ
中盤以降に楽になるのは、強化の順番を間違えないことだ。
優先すべきはレイジ関連と再起関連である。ダメージ数値を先に伸ばすより、怒りが貯まりやすく、落ちても一度起き上がれる状態を先に作ったほうが、難しい部屋を安定して越えられる。範囲技のクールダウン短縮は、雑魚部屋が増える中盤で効いてくる。探索系のアダプテーションは、コンプする気がないなら後回しでいい。
コンボは複雑に組まなくていい。基本はこれだ。
- 接近して□を2〜3発
- △で怯ませるか壁に叩き付ける
- 開いた相手にバラージ(□連打の突き刺し)
- 周囲が寄ってきたら特殊技で散らす
- レイジが2段階に入ったら、わざと被弾を恐れず押し切る
ボスは「新しいルール」より「同じルールの耐久戦」になりやすい。パターンを覚えるというより、阻害装置と追加兵を処理しつつ、レイジを切らさないことが本体になる。焦って3段階目を維持しようとすると、ゲージが早く溶けて無防備になる。2段階目を維持して、締めで3に上げるほうが安定した。
バイク移動は移動手段以上の見せ場もあるが、運転ゲーではない。追い付き、飛び移り、爪で車両を潰す演出用の区間と思った方がいい。ここで上手くなろうとしなくていい。
東京とマドリプールは箱の配置がやや隠れている。匂い追跡を切っていると、同じ通路を二度歩くことになる。本編中に「あとで戻ればいいや」と思う箱は、実際戻るとロードと再配置が面倒なことがある。気になるならその場で拾う。
トロフィーはオープンワールド作品ほど散らばっていない。プラチナまでの追加時間は比較的短い。ただし収集の一部はミッション進行に紐づくので、クリア後に全部回れるわけではないものもある。コンプ前提なら、各章の終盤でマップとリストを一度確認した方がいい。
難易度を上げるなら、レイジ管理ができるかどうかを先に見る。敵の攻撃が早くなるというより、ミスったときの猶予が減る。ラストスタンド前提の立ち回りが身についてから上げた方がいい。最初から最高難易度にすると、序盤の武器の少なさと相性が悪い。
買っていい人、待った方がいい人
先に点数の話をする。77点前後という数字は、「失敗作」ではない。インソムニアックの過去作や、今世代のソニー1stに比べて一段落ちる、という数字だ。プレイヤー側の体感はもう少し高い人が多い。店頭やストアの星が多いのは、批評が嫌った単調さを、プレイヤーが「ウルヴァリンだからこれでいい」と受け取っているからだと思う。
買うべきなのは、次のような人だ。
- 近接で敵を解体する感触が好き
- ゴッド・オブ・ウォーや古い時代の一本道アクションのテンポが苦にならない
- ローガンというキャラクター自体が好きで、正しい暴れん坊を操作したい
- オープンワールドの移動に疲れていて、 tonight から終わりまで物語を押し通したい
- 流血表現を「演出」ではなく「中身」として受け入れられる
待った方がいい、あるいはセールを待った方がいいのは、次のような人だ。
- スパイダーマン2の「街をplaygroundにする感覚」をもう一度欲しい
- 戦闘の成長と敵の多様化に、後半まで新しい宿題が欲しい
- ステルスや探索の深さを求める
- 70ドル近い新作に、批評平均以上の革新を求める
- 血が苦手、あるいは横で誰かが見る環境がある
グラフィックと演出は、発売時点のPS5作品として第一線だ。顔の質感、傷が塞がる過程、雨とネオン、切断の物理。ここは点数以上に手が込んでいる。フレームも、少なくとも自分が遊んだ範囲では大きな破綻はなかった。日1パッチ前提ではあるが、「動かない新作」ではなかった。
音も強い。爪が金属を滑る音、肉を割る音、レイジ3に入ったときの呼吸。BGMは戦闘中に主張しすぎず、カットシーンで顔を出す。ローガンがバーで黙っている時間の方が、テーマ曲より印象に残った。
日本語で遊ぶ場合、字幕の速度は標準で足りる。専門用語やチーム名は初出でログに残るので、マーベル知識が薄くても置いていかれにくい。作中の用語解説が用意されている点は親切だ。逆に、コミックを読み込んでいる人は「この解釈は原典のどれに寄せているか」を考えながら遊べる。どちら向けにも扉は開いている。
続編や他機種移植の話は、発売直後の今は確定情報として書くものがない。今はPS5の作品として評価するしかない。その前提で言うと、インソムニアックがスパイダーマン以外のヒーローで「移動の発明」を捨て、暴力の発明に振り切った実験、というのが一番正確な位置づけだ。成功している部分と、 duré しきれなかった部分が、同じ爪の上にある。

遊び始めてから気をつけること
クリア後の自分用メモとして残す。
セーブはミッション単位で厚い。途中離脱しやすい。一本道なので「今どこだっけ」にもなりにくい。その代わり、同じ廊下の再戦が多く、休憩のタイミングを自分で作らないと、血の匂いが頭に残る。1時間やって止める、がちょうどいい。3時間連続は、後半に単調さが乗ってくる。
アクセシビリティはそこそこ揃っている。操作の補助、字幕、一部の演出軽減。パリィの窓を広げる系のアダプテーションもあるので、反射に自信がなくても「切れない」わけではない。ただし、補助を全開にするとレイジの緊張が消える。作品の味は「死にかける」側にある。
マルチやシーズンパス的な後出しは、少なくとも発売時点では本編完結型だ。オンライン要素で延命する作品ではない。やり込むならトライアルと収集と、高難易度の再走になる。
周囲の評価に引っ張られすぎない方がいい。6点のレビューは「後半が同じ」を正確に突いている。9点のレビューは「爪の感触と演技」を正確に褒めている。両方正しい。自分の15時間がどちらに近いかは、最初のボスを越えたあたりでだいたい分かる。そこで「まだ同じことをしていたい」と思えれば最後まで持つ。「もう分かった」と思えば、本編を急いだ方がいい。
スパイダーマンシリーズから入る人へ、一つだけ具体的に書く。ウェブストライクの代わりになるものは、ない。空中コンボの華麗さも、ない。あるのは、地面に足をつけて、相手の胸に爪を埋めるまでの0.5秒だ。それが楽しいかどうかが、購入判断のほぼ全てである。
まとめ
『Marvel’s Wolverine』は、正しい意味で古いゲームだ。一本道で、近接で、演出が厚く、敵のバリエーションより主人公の手触りを優先する。2026年のAAAとして新しい箱を開けた作品ではなく、1980年代から続く「刃物を持った男の物語」を、今の顔と今の血の量でやり直した作品に近い。
戦闘の発明はレイジとヒーリングファクターの結びつきにある。逃げると弱く、暴れると生きる。この一点だけでも、ウルヴァリンをゲームにする意味は出ている。物語は、予想できる展開を含みつつ、ローガンという人間の疲れ方はよく描けている。映像と演技は、点数の議論より先に「これは高い金を払った仕事だ」と分かる。
足りないのは、15時間を持たせる変化だ。新しい敵、新しい移動、新しい戦い方。そこを求めると、批評の77点が見えてくる。爪の感触とキャラクターだけを求めると、ストアの星の高さが見えてくる。
自分はクリアしてよかった。もう一度最初からやるかは、少し迷う。もう一度、レイジ3で部屋を真っ赤にする感覚だけは、覚えている。買うならその感覚を取りに行けばいい。スパイダーマンの次を取りに行くと、少し置いていかれる。
それが、PS5でウルヴァリンを最後まで斬ったあとの、一番正直な評価だ。
