【ウルヴァリン】試遊レビュー 【Marvel’s Wolverine】
発売日からずっと遊んでいた。スタッフロールが流れたあとも、しばらくコントローラーを置きたくなかった。
インソムニアックがスパイダーマンではなく、ウルヴァリンを選んだ理由は、プレイしてすぐ分かる。街を飛び回る爽快感ではなく、敵の懐に飛び込み、骨まで削る感覚を主役にしたかったのだと思う。2026年9月15日にPS5で出た『Marvel’s Wolverine』は、そういうゲームだった。
この記事では、クリアした自分の感想を中心に、序盤の進め方、レイジの使い方、序盤で詰まりやすいポイントまでまとめる。ネタバレは最小限にする。まだ本編を進めていない人でも読めるように書いた。
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どんなゲームか
ジャンルは一人用のアクションアドベンチャー。オープンワールドではない。ミッションを順番に進めていく、かなり直線的な作りだ。舞台は一つに固定されず、カナダの雪原、東南アジアの島国マドリプール、東京・新宿、白山周辺と場所が次々に変わる。
価格は通常版が税込8,980円、デジタルデラックスが9,980円。プレイ時間は人によるが、メインだけならだいたい15時間前後。収集要素や「悪夢の試練」まで拾うと20時間近くになる。自分は初回をノーマル相当で進め、気になった箱とウイスキー瓶は拾いながら、18時間ちょっとでクリアした。
年齢区分はCERO Z。血、切断、欠損がかなり多い。設定で低ゴアにもできるが、この作品の戦闘は「切る」ことが核なので、表現を弱めると味が落ちる。苦手な人は最初に確認した方がいい。

主人公はジェームズ・「ローガン」・ハウレット。声はリアム・マッキンタイア。日本語音声も入っている。自分は最初英語で始め、途中から日本語に切り替えて聴き比べた。どちらも悪くないが、ローガンの低い声と息遣いは英語の方がしっくりきた。
物語はオリジナル。スパイダーマン作品と同じ地球(いわゆる1048)だが、スパイダーマン本人は出てこない。X-MENの学校ものでもない。ローガンは3年前にチームXを離れており、記憶も欠けている。反ミュータントの富豪ボリヴァー・タスクと、サイボーグ傭兵のリーヴァーズがミュータントを攫っている。それを止めるために、昔の仲間のもとへ戻る。
チームXの顔ぶれが面白い。ミスティーク、セイバートゥース、そしてナサニエル・エセックス。普通なら敵側にいるはずの面々と肩を並べる。途中でジーン・グレイと出会い、物語の重心が少しずつ変わっていく。ここが本作の核だと思う。戦闘が派手でも、休憩の会話でローガンが「自分の怒りが怖い」と漏らす瞬間の方が残った。
戦闘の感触が、この作品のすべて
最初の施設を斬り進んだ瞬間に、作り手が何を一番大事にしたか分かった。
基本は近接。軽い攻撃と重い攻撃、パリィ、回避、そして距離を詰める飛び込み。スパイダーマンのような遠距離の牽制はほとんどない。遠くの敵は爪で引っ掛けて自分から近づく。距離を取るほど不利になる。だから常に前へ出る。
レイジメーターがこれを支えている。攻撃を当てる、パリィする、倒す、ステルスキルを決める。そうやって怒りが溜まる。3段階ある。
- 第1段階:コンボの終わりが少し重くなる
- 第2段階:コンボフィニッシュが強くなり、「ラストスタンド」が使える
- 第3段階:画面がほぼモノクロになり、血だけが赤く残る。弱い敵は即処刑できるようになる
ラストスタンドが肝だ。体力が尽きても、レイジが1本残っていればボタン連打で起き上がれる。代わりにレイジは消える。つまり「暴れている最中だけ不死身に近い」。止まると弱い。この設計が、キャラクターそのものだった。
序盤でヒーリングファクターを過信すると死ぬ。普通に回復はするが、抑制装置があるエリアでは治りが極端に遅くなる。先に装置を壊してから乱闘に入る、という順番を覚えないと、中盤で何度もチェックポイントに戻される。
テクニックは方向キー、あるいはL1+顔ボタンに割り当てる必殺技だ。序盤から使えるトルネードスピンは周囲の雑魚を一掃できる。ブルラッシュは直線の突進。リレントレスは一定時間、回復速度を上げる。テクニックポイントは敵を倒す、箱を壊す、音声ログを聴く、思い出の品を調べることで貯まる。最初から全部温存する必要はない。序盤はトルネードスピンと回復系を優先した方が楽だった。
ステルスもある。匂いを辿って敵の位置を把握し、上から、あるいは背後から仕留める。ただ、本作のステルスは「必須の隠密ゲーム」ではない。通路の角で一人落とす程度。すぐ戦闘に移行する。無理に全員を黙らせるより、レイジを溜めて正面から割った方が早い場面が多い。
部位欠損は見た目だけではない。腕を落とされた銃兵は接近戦に切り替える。脚を斬られると動きが鈍る。派手さのためだけでなく、戦場の空気を変えるための演出になっている。

始めたばかりの人へ
難易度は最初、標準でいい。自分も標準で始めた。パリィのタイミングが掴めるまで、少し余裕があった方がいい。慣れたら上げればいい。アクセシビリティはかなり細かい。ゴアの強さ、カメラ、操作補助まで触れる。
最初にやっておくと楽なことは、このあたりだ。
- 操作の「パリィ」と「バースト(連続斬り)」を練習モードがわりに序盤の雑魚戦で繰り返す
- テクニックはトルネードスピンを早めに取る
- 箱と像は見つけたら壊す。素材と経験値が入る
- 匂いの軌跡は無視せず一度辿る。近道や収集物に繋がることが多い
- 抑制装置を見つけたら、ボスや大人数戦の前に壊す
- スーツは見た目変更が主。性能差を気にして最初から悩む必要はない
予約特典やデラックス特典でテクニックポイントが最初から入る。なくても序盤で足りなくなることはない。自分は通常版相当で始めたが、ポイント不足で詰まった記憶はない。
移動はスパイダーマンほど自由ではない。高いところへ飛びつく、壁を砕く、バイクで走る、飛行機の機体を登る。セットピースとして組み込まれている。探索パートでも「どこへでも行ける」わけではなく、次の目的地へ誘導される。道に迷うことは少ない。逆に言えば、寄り道の幅は狭い。
悪夢の試練は、マップ上に置かれた挑戦部屋だ。波状の敵を耐える、制限時間で倒す、といった内容。銅以上で報酬が出る。アダマンチウム評価まで取る必要はない。本編のテンポを崩したくない人は、気になるものだけ入ればいい。自分は中盤まで全部拾っていたが、後半は本編を優先した。戦闘の練習にはなるが、物語の熱を冷ますこともある。
効率よく進めるなら
序盤から中盤までは、レイジを切らさないことだけ意識すればいい。コンボを途中で止めず、フィニッシュまで通す。パリィ成功でもレイジは貯まる。防御に回っているつもりでも、実は攻撃の準備になっている。
育成は二系統ある。テクニックとアダプテーションだ。テクニックは瞬間の技。アダプテーションは持続効果。回復速度、レイジの溜まりやすさ、ステルスキル時のボーナスなど。自分が先に振ったのは、コンボ終了時にレイジが増える系と、回復が安定する系。派手な必殺より、暴れる時間を伸ばす方が結果的に強い。
中盤以降、敵の種類が増える。リーヴァーズの重武装、ハンドの刀使い、大型の機械。全部同じリズムで斬ると負ける。刀使いはパリィ勝負。重武装は抑制装置と装甲を先に潰す。大型はテクニックのクールダウンを見て、周囲の雑魚を先に減らす。ここまで来ると、ただの連打ではレイジが追いつかない。
ジーンと同行する区間は、戦闘のリズムが変わる。彼女が敵を浮かせたり、道を作ったりする。クリティカルストライクの機会が増える。一人で全部斬ろうとせず、彼女が止めた敵を先に処理した方が早い。物語的にも、この区間でローガンの表情が一番柔らかい。
収集物はウイスキー瓶、素材箱、音声ログ、思い出の品。コンプリート目的でなければ、目に入ったものだけ拾えば十分だ。音声ログは世界観の補強になるが、必須ではない。スーツと爪の見た目は、箱や試練の報酬で増える。クラシックブラウンは予約特典で序盤から使える。見た目の好み以外に差は小さい。
難易度を上げるなら、パリィの判定に慣れてからがいい。高難易度ではラストスタンドの依存度が上がる。レイジを温存しすぎて第3段階に届かないより、中盤で使い切って起き上がる方が生存率は高い。逆にボス戦直前だけは、1本残しておく。
ニューゲームプラスがある。レベル上限が上がり、新しいテクニックとアダプテーションが解禁される。一度クリアしたあと、戦闘だけをもう一度やりたい人向けだ。自分はまだ二周目に入っていない。一周目の余韻が残っている。
舞台ごとの印象
最初のタスク施設は、チュートリアルであり宣言でもある。狭い廊下、監視カメラ、突然の乱闘。ここで「前に出続ける」感覚を体に入れさせられる。
カナダは空気が違う。雪、森、古い施設。匂い追跡が一番活きる場所でもある。静かな区間が長いぶん、戦闘に入ったときの音が重い。ローガンの過去に触れる断片も、ここでは多めだ。

マドリプールは作品の顔になる街だ。ハイタウンとロウタウンの落差がはっきりしている。高級街のガラスと、下町の湿った路地。タイガータイガーが切り盛りするバーで一息つく場面は、アクションゲームにしては珍しく「居場所」がある。ジーンとの会話の多くも、ここで積まれる。バイクのチェイスや高層ビルの突入は、インソムニアックが得意な見せ場だ。
日本パートは、日本人として一番気になった。新宿、歌舞伎町、白山。観光ポスターのような東京ではなく、夜の雑居ビルと地下通路の東京だった。ハンドとの戦いが主軸になる。刀と爪の打ち合いなので、パリィの精度が問われる。飛行機内の乱闘から始まる導入は、テンポがいい。ロケのディテールは「日本を知っている人が監修した」感じがある。看板の文字、路地の幅、雨の残り方。完璧ではないが、海外作品の日本ステージとして違和感は少なかった。
終盤は場所が再びマドリプールへ戻り、話が一つの場所に収束する。ここから先は書かない。ただ、戦闘の繰り返しが目立ち始めるのも終盤だ。新しい敵の出し方より、同じ型の部屋を大きくした戦いが増える。ストーリーが引っ張ってくれる区間と、手が疲れてくる区間が重なる。
良かったところ
キャラクターの顔と声が強い。ローガンはただの怒れる男ではない。暴れたあとに黙る間が長い。リアム・マッキンタイアの声は、低いだけでなく、疲れていた。ジーンは最初から聖人ではない。自分の力を持て余している。セイバートゥースは「ローガンが堕ちた先」として機能する。ミスティークの皮肉は、チームの空気を軽くする役割以上に、誰が誰を信じているかを示す。エセックスはトロイ・ベイカーが担当していて、親切な保護者に見えて、会話の端がいつも少し冷たい。
映像はPS5として上位だ。ベース本体でも十分きれいだが、Proのほうが髪と傷のディテールが残る。傷口が塞がっていく過程を、カメラが隠さない。カットシーンとプレイの切り替わりが速い。ロードで冷めることがほとんどない。
セットピースの質が高い。飛行機、バイク、崩れる建物、雪崩のような追跡。オープンワールドを捨てた代わりに、映画のワンシーンを操作させる時間が増えた。直線的なのは欠点でもあり、没入のための選択でもある。ファミ通の表現を借りるなら、「遊べる映画」に近い。自分も途中で止めにくかった。
戦闘の初期衝動は本物だ。爪が肉に入る音、骨を削る感触、返り血でスーツが黒ずむ様子。最初の5時間は、ただそれだけで満足できた。
気になったところ
戦闘の型が早い段階で見え切る。テクニックを増やしても、やることは「近づく、斬る、パリィ、レイジを溜める」の繰り返しだ。中盤までは気持ちいい。終盤は手が覚える。ボスも、新しいルールというより耐久とフェイズの組み合わせが多い。
誘導が強い。匂いの線、マップのマーカー、音声のヒント。迷わない代わりに、自分で道を探す快感は薄い。スキルアップの指摘どおり、「手取り足取り」が続く。2026年の作品としては古い作りに感じる人もいるだろう。自分も、箱の位置まで線で示されるのは少し興ざめだった。
オープンワールドを捨てた判断自体は理解できる。ローガンは一つの街のヒーローではない。世界を渡り歩く男だ。ただ、各拠点の滞在時間が短く、マドリプール以外は「訪れた」以上の密度になりにくい。日本パートも印象は良いが、滞在が短い。
評価が割れているのも頷ける。メタスコアはおおむね77前後。スパイダーマンシリーズより低い。自分の感覚でも「過去作を超えた」とは言えない。代わりに、別のものを作ろうとした痕跡はある。それが成功し切ったかは、プレイヤーが戦闘の繰り返しにどこまで付き合うかで決まる。
悪夢の試練は、収集目的以外では優先度が低い。本編の感情の流れを切る。全部やらなくても、物語は完結する。
誰向けか
向いている人ははっきりしている。
- ウルヴァリンというキャラクターが好きな人
- 近接で前に出るアクションが好きな人
- 15〜20時間で一区切りつく作品を探している人
- ゴアを含めた「大人向けヒーロー」を見たい人
- スパイダーマンの移動より、殴り合いの手応えが欲しい人
向かない人もはっきりしている。
- 広いマップを自分のペースで巡回したい人
- 戦闘の深みやビルドの分岐を長く味わいたい人
- 血と切断が苦手な人
- スパイダーマン2の完成度をそのまま期待している人
自分は前者だった。後者の気持ちも分かる。インソムニアックの名前で買うと、街を走る自由を無意識に待ってしまう。その期待は、最初の一時間で捨てた方がいい。捨てたあとなら、爪の感触だけが残る。
クリアして残ったもの
スタッフロールのあと、最初に思い出したのは派手な必殺ではなかった。バーのカウンターで、ローガンがほとんど何も言わずに酒を置く場面だった。暴れるゲームなのに、静かな時間が印象に残る。それがウルヴァリンというキャラクターの正しさでもある。
戦闘は後半で伸び悩む。それでも序盤の「前に出続けるしかない」感覚は、しばらく他のゲームでは味わえないと思う。回復するために逃げるのではなく、回復するために斬る。この逆転が気持ちよかった。
スパイダーマンシリーズの延長として見ると物足りない。ウルヴァリンの単独作として見ると、必要なものは入っている。記憶の欠けた男が、怒りをどう扱うかを、言葉より先に操作で見せてくる。その一点で、自分は satisf できた。
これから始める人は、最初の施設を急がない方がいい。パリィの音と、爪が止まったときの間を体に入れる。そこから先は、レイジが教えてくれる。止まれば死ぬ。動けば、もう一度起き上がれる。
それが、この作品で一番ウルヴァリンらしい部分だった。
