『ブリガンダインアビス』評価レビュー :ブリガンダイン アビスを遊んでわかった評価と始め方

『ブリガンダインアビス』評価レビュー

『ブリガンダイン』シリーズの最新作が、ようやく手元に届いた。HEXマップの上で騎士とモンスターを動かし、隣国を取り、拠点を育て、帝国の圧力に耐える。前作『ルーナジア戦記』から6年。世界設定は切り替わり、物語のつながりはない。だからシリーズ未経験でも入りやすい、というのが公式の言い方だ。実際に触れてみると、その言葉は半分正しく、半分は甘い。

遊び始めた瞬間から、盤面は美しい。高低差のある六角形の戦場、遠距離ユニットを高所に上げたときの射程の気持ちよさ、リーダーが落ちた瞬間に部隊ごと消える緊張。ここは確かにシリーズの核が残っている。一方で、編成と侵攻の繰り返しは長く、難易度は途中で変えられない。イージーでも油断すると負ける。ノーマルなら序盤から何度も詰まる人が出るだろう。発売直後のSteam評価が荒れているのも、その手応えと完成度の両方を同時に突かれているからだと思う。

この記事では、ゲームの全体像、国の選び方、序盤の進め方、戦闘で負けにくくなる考え方、長く遊ぶときの注意点まで、実際に盤面を動かして感じたことを書く。攻略書ではなく、これから買う人、体験版から本編に進む人向けの評価と実用メモだ。

どんなゲームか

舞台はメルティーテ大陸。かつて魔術師ルナディアが作り出した魔術の鎧「ブリガンダイン」が、侵略国家アビスローア帝国を退けた。それから200年。大陸最強のソルジュナート王国で宰相ケイオスルスが謀反を起こし、「新生アビスローア帝国」を立てる。25の勢力が割拠する大陸で、プレイヤーはそのうちの一国を率い、騎士と100体を超えるモンスターで帝国に抗う。

ブリガンダイン アビス 攻略|効率よく進めるための運営
ブリガンダイン アビス 攻略|効率よく進めるための運営

遊びの骨格は二つある。

一つはストーリーモード。選べるのは6勢力。グラン・ドラグニカ、スカーレットウィル、ミスティアイン、ピュリファーノ、サムラ族、パンデミュオン。それぞれ主人公も戦う理由も違う。竜と人が共存しようとするテイマーの旅、父を討たれた傭兵団の少女、女王の国を守る将軍、妖精の隠れ里、孤島の武の集団、禁忌のキマイラ技術を扱う組織。勧善懲悪の軸は前作よりはっきりしている。帝国の軍事力は序盤から圧倒的で、「勝てる気がしない相手に、自国のやり方で風穴を開ける」構成だ。

もう一つがミッションモード。大陸の24カ国から一国を選び、国ごとに違う目標を追う。大陸統一、拠点強化、指定アイテム収集、モンスター収集、仲間集め、借金返済、拠点防衛など、戦争だけが正解ではない。戦争を避けて探索と内政で目標を達成する国もある。公式が「200時間以上」と出す根拠は、この6本の本編に加えて24カ国分の遊びがあるからだ。1本のストーリーは15〜20時間程度、全部やると100時間を超える。ミッション側は1時間で終わるものから20時間かかるものまで差が大きい。

進行は「節」単位。編成フェイズで拠点を拡張し、ユニットを雇い、装備を整え、部隊を組む。攻撃フェイズで隣接する街道沿いの国へ侵攻する。勝つとその土地を取り、負けると取られる。戦場には最大3部隊まで出せる。各部隊にはリーダーがいて、リーダーが倒されると部隊は撤退する。前作を知っている人なら、この「リーダーを守る/リーダーを狙う」感覚はすぐ戻ってくる。

戦闘フィールドはHEX。今作の大きな追加が高低差だ。高所は遠距離に強く、低地や水場は命中や移動に影響する。属性相性、ZOC(支配領域)、支援システムが重なる。支援は、リーダーが部隊内のモンスターの能力を一時的に自分へ乗せる仕組みだ。単純な攻撃力アップだけではなく、特定モンスターと組むと味方全体が属性を帯びる、といった個性もある。ゴリ押し全軍前進も、守りだけ固めて待つ戦法も、賢いAIにはあまり通用しない。数的有利を局地で作り、射程と高低差で削り、リーダーをどう落とすかを考えるゲームになっている。

価格は通常版9020円。対応はSteam、PS5、Nintendo Switch 2、Xbox Series X|S。CERO B。オンライン対戦はない。一人で大陸を動かす作品だ。

始める前に決めておくこと

最初に選ぶべきは難易度と国だ。途中変更できない。ここを雑に決めると、後から「やり直した方が早かった」となりやすい。

イージーは初心者向け、という説明は正しい。ただし歯ごたえは残る。バフとデバフ、属性、支援を使わないと負ける戦闘はある。SRPGやHEXのウォーシミュレーションが苦手なら、迷わずイージーでいい。ノーマルは序盤からゲームオーバーが出る。メディアの先行プレイでも、序盤ステージで二度負けてイージーに下げた人がいる。ハードはシリーズ経験者向けだと思った方がいい。

国選びは好みでいいが、体験版で触れるのはグラン・ドラグニカとスカーレットウィルだ。前者は竜とテイマーの物語で、荒野の互助組織という立ち位置。後者はユニコーンと共に走る傭兵団で、父を失ったガーネットが団を継ぐ。雰囲気が明るい勢力と重い勢力が混ざる。ピュリファーノは妖精の隠れ里で、声優陣の軽さが目立つ。パンデミュオンはキマイラと禁忌技術で、物語のトーンが一段暗い。サムラ族は孤島の武力、ミスティアインはルナディアの意志を継ぐ側に近い。

初めてなら、体験版で手触りを確認してから本編の国を決めるのがいちばん失敗が少ない。体験版のセーブは本編に引き継げないので、練習と割り切る。

もう一つ、最初に覚悟しておくことがある。このゲームは「戦闘が上手いだけ」では伸びない。編成フェイズの金と時間の使い方が、次の戦場の勝敗を決める。モンスターの雇用と復活にも金がかかる。新しい個体を次々雇うより、主力の役割を決めて育てた方が後半が楽になる。

序盤の進め方

最初の数節は、攻め急がない方がいい。帝国側の圧力は早い。防衛線が複数あるマップでは、全部を同じ厚みで守れない。どこを捨て、どこで数的有利を作るかを先に決める。

編成フェイズで優先したいのは次の三つだ。

  • 主力リーダーの生存手段。回復、退避、護衛用の前衛を同じ部隊に置く
  • 遠距離か魔法を一枠は確保する。高所に上げた瞬間、盤面の支配力が変わる
  • 拠点の最低限の拡張。探索と雇用の回転が止まると、戦力が固定されて敵の成長に置いていかれる
ブリガンダイン アビス 攻略|序盤の始め方
ブリガンダイン アビス 攻略|序盤の始め方

戦闘では、全軍を同じ方向に出す癖を捨てる。AIは離れた部隊を各個撃破してくる。広いマップでは、敵の一翼に自軍を寄せて3対1を作り、決着がついたら次の集団へ回す。待ちに入ると、敵が射程に入ってこない膠着が起きやすい。攻撃側にターン制限がない戦闘では、こちらから動いて局地戦を作った方が早い。

リーダー狙いとリーダー守りは常に同時に考える。こちらが相手リーダーを落とすルートを探すのと同じだけ、相手もこちらを見ている。突出したリーダーは、支援で硬くしても囲まれる。柵や破壊可能な地形があるマップでは、敵の進路を潰すだけで戦い方が変わる。試遊や体験で「正面からぶつかって負けた」という感想が多いのは、ユニット数は互角でも、位置取りと支援の使い方が噛み合っていないからだ。

経験値の稼ぎ方も雑にしない。撤退ばかり繰り返すと、敵とのレベル差が開く。全滅させて経験を取る戦闘と、被害を抑えて拠点を守る戦闘を分ける。探索の修練で地道に底上げしつつ、勝てる戦場ではしっかり経験を回収する。この切り替えができないと、中盤で突然壁に当たる。

属性は暗記しなくていい。ただし「この敵の色にはこの攻撃が通る」を戦闘前に一度見る習慣はつけた方がいい。支援で属性を一時的に乗せられるので、固定編成の弱点をその場で補えるのが今作の強みだ。同じリーダーでも、付けるモンスターを変えれば役割が変わる。前衛用の支援と、全体に属性を配る支援を使い分けると、部隊の枚数が少なくても対応力が残る。

効率よく伸ばす考え方

長く遊ぶなら、ユニットを全部均等に育てない。役割を四つに分けると迷いにくい。

前衛は耐久とZOC。ドラゴン系や高耐久で通路を塞ぐ。後衛は魔法と遠距離。高所に置いて集中砲火する。支援役は回復とデバフ、ピクシー系などが仕事をしやすい。奇襲は飛行や高移動で、遅れて来る敵リーダーや孤立した遠距離を潰す。この四つが揃っていれば、マップが変わっても組み替えやすい。

雇用制になった恩恵は大きい。前作より「このモンスターを試したい」が実行しやすい。ただし金は無限ではない。序盤に珍しい個体を全部抱え込むと、復活費用で編成が止まる。主力の契約を安定させてから、枠を増やす。倒されたユニットの復活が有料である以上、「死なせない動き」そのものが内政でもある。

支援と展開は、慣れないうちは過剰に使わなくていい。まずは「このリーダーに、このモンスターの能力を乗せる」を一パターン覚える。戦場でリーダーが落ちそうなとき、支援で耐久や属性を足して逃げ切る。それができるようになってから、展開でスキルの再利用を考える。最初から全部使おうとすると、操作と情報量で盤面が見えなくなる。

ミッションモードは、ストーリーを一本クリアしてから入ると理解が早い。国ごとの勝利条件が違うので、戦争ゲームだと思って突っ込むと目標とずれる。借金返済や収集が主目的の国では、戦線を広げすぎない方がいい。逆に防衛特化の国は、複数ラインを同時に見なければならず、体験会でも「守る場所が多すぎる」と評されていた。汎用ユニットを雑に扱うと、そういう国で手が足りなくなる。

ストーリー側は、国によってテンポが違う。明るい勢力でも、帝国の物量は変わらない。イベント節の前に軍備を厚くする、というのが基本のリズムになる。特定の節にイベントがあるので、その手前で拠点と主力のレベルを一段上げておく。上げられないなら、その節は守りに回して被害を最小にする判断も必要になる。

実際に遊んで気になった点

良いところから書く。

戦場のカタルシスは本物だ。広いHEXで敵の中央部隊を横から潰し、リーダーを落として部隊ごと消した瞬間は、戦略ゲームをやる理由そのものが出る。高低差が加わったことで、ただの相性ゲームではなくなった。高所の弓と下からの突撃、水場を避けて回り込む、柵を壊して進路を変える。ボードゲームを立体にした手触りがある。

国の個性も強い。同じ帝国に抗っていても、竜を守る話と妖精の里を守る話では温度が違う。声と演出が軽い勢力は、シリアス一辺倒にならない緩衝材になっている。ミッションモードの目標のバラつきは、本編をクリアしたあとの居場所として機能する。一つの国を極める人にも、24カ国をはしごする人にも枠がある。

ブリガンダイン アビス 攻略|詰まりやすい点と、その対処
ブリガンダイン アビス 攻略|実際に遊んで気になった点

問題もはっきりしている。

難易度の固定は、人を選ぶ。最初にノーマルを選んで序盤で詰むと、最初からやり直しになる。イージーでも緊張感はある、というのは褒めていい設計だが、「自分の実力を見誤ると高くつく」設計でもある。

操作と視認性は、体験版時点から指摘が出ていた。混戦、高低差の大きいマップ、大型ユニットが重なると、どのマスを指しているのか分かりにくい。カーソルが意図したマスに乗らない感覚も報告されている。パッドよりマウスの方が楽、という声は自然だ。ターン制なのに要求スペックは高めに見える。体験版では30fps固定の不満があり、開発側は60fps切替を入れると応えた。発売直後のSteam評価が厳しい理由の一つは、この手の快適さだと思う。ゲームの中身が悪いというより、快適さとバランスの調整が発売日に完全には追いついていない印象がある。

物語面では、「他国と戦う必然」が薄いと感じる場面がある。帝国という巨悪は分かりやすい。だが国盗りの過程で隣国を攻めるとき、物語上の理由が追いつかないことがある。国盗りゲームとして盤面は面白い。ドラマとして全ての戦争に意味が乗っているかと言われると、温度差がある。

グラフィックの方向性は前作からアニメ調に寄った。キャラクターの顔は見やすい。戦場のジオラマ感は残っている。ただし最適化と演出の厚みは、人によって評価が割れる。PCで高設定を狙うなら、推奨のRTX 2060クラスを目安にした方がいい。家庭用は機種によってロードと携帯性の取り方が変わる。長く座るゲームなので、自分の遊び方に合うハードを選んだ方がストレスは少ない。

誰に向いているか

向いているのは、次のような人だ。

HEXのシミュレーションが好きで、ユニットの相性と位置取りを考えるのが苦にならない人。国を育てて隣を取る過程そのものを楽しめる人。一つの物語で終わらず、別の国でもう一度最初から組み直したい人。前作を遊んで、モンスター運用とリーダー護衛の感覚が残っている人。

向かないのは、テンポの速いタクティカルRPGだけを求めている人、自動戦闘で流したい人、難易度を途中で下げたい人、発売日時点の最適化やUIの粗を許せない人だ。ファイアーエムブレムのような「キャラ一人ひとりのドラマ」を主軸に求めると、重心が違う。こちらは国と部隊の話が先で、個人の話はその中に乗っている。

シリーズ初心者でも遊べるか、という問いには「遊べる。ただしイージー推奨」と答える。システム自体は他のシミュレーションRPGと極端に違うわけではない。違うのは、リーダー撃破で部隊が消えることと、内政と戦場の両方を同時に見なければいけないことだ。そこさえ飲み込めてしまえば、あとは盤面の面白さが残る。

買い方の判断材料として、体験版は使った方がいい。グラン・ドラグニカとスカーレットウィルの第2節まで触れる。支援、高低差、リーダー撤退、編成の忙しさは、文章より実際の数戦闘の方が分かる。体験版で「もう一回あの配置をやり直したい」と思えたなら、本編の長さは苦になりにくい。逆に、一戦闘の情報量で疲れたなら、9020円と200時間の看板は重い。

まとめ

『ブリガンダイン アビス』は、ゴリ押しも待ちも通さない骨太なファンタジーSLGだ。高低差と支援が加わり、盤面の読みは前作より細かくなった。6つの本編と24のミッションで、量は確かに多い。帝国に抗う構図は分かりやすく、国ごとの顔つきも分かれている。

同時に、難易度の固定、操作と視認、最適化、物語上の戦争理由の温度差は、発売時点で無視できない。Steamの初期評価が厳しいのは、中身が空っぽだからではなく、快適さとバランスが評価の前面に出てしまっているからだと思う。メディアの先行プレイが「手応えと遊びやすさの両立」と書いたのも嘘ではない。その両立は、難易度選択を正しくし、編成を雑にしない人の側に寄っている。

自分なら、体験版で手触りを確認し、イージーかノーマルかを決めてから買う。主力の役割を先に決めて、リーダーを死なせない動きを覚える。戦場では全軍前進をやめ、一翼に寄せて数的有利を作る。その三つができれば、このゲームの面白さはちゃんと出てくる。盤面で作戦がハマったときの快感は、今作でも健在だ。巨悪に抗う話を、国の単位で長くやりたい人には、今の粗を飲み込んでも触る価値がある。逆に、快適なSRPGをすぐ求めているなら、パッチと評価が落ち着くのを待った方がいい。

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